1.労災保険 労災事故は事業主が100%補償しなければならない
労働基準法の災害補償の特色は、業務上の災害に対する使用者の無過失責任です。
つまり、労働者の過失の有無にかかわらず、使用者は労働者の業務災害を補償しなければなりません。
使用者が労働者の災害補償を行わない場合は労働基準法119条により「6か月以下の懲役、30万円以下の罰金」に処せられます。
この災害補償責任(項目2.)は、労災保険(政府労災)に加入することで、責任が免除されたことになります。(労災保険で労働者の業務災害を補償できるため)
2.労災保険 事業主に義務付けられている補償内容とは
1.で記載のように、労災にあった労働者の補償は、事業主が100%行わなければなりません(労災保険に加入することで費用は労災保険から給付されます)。
事業主が補償しなければならない内容については以下(労基法75条~80条)の5つがあります。
- 療養補償(治療にかかる費用の実費を補償しなければならない)
- 休業補償(平均賃金の60%を補償しなければならない)
- 障害補償(後遺障害1~14級となった場合には障害補償をしなければならない)
- 遺族補償(死亡に対する一時金または年金を支払らわなければならない)
- 葬祭料(葬祭を行う遺族に対して、葬祭費用を払わなければならない)
1.療養補償(治療費) 第75条
労働者が業務上負傷し、または疾病にかかった場合においては、使用者はその費用で必要な療養を行い、または必要な療養の費用を負担しなければなりません。被災した労働者が、療養開始後3年経過しても、負傷または疾病が治らない場合は、使用者は、平均賃金の1200日分の打切補償を払うことで、その後はこの法律の規定により治療費の負担は免除されます。
2.休業補償 第76条
労働者が労働することが出来ないために賃金を受けれない場合においては使用者は、労働者の治療中、平均賃金の60%の休業補償を行わなければなりません。
3.障害補償 第77条
労働者に障害が残った時に、使用者はその障害の程度(1級~14級)に応じて、平均賃金に別表に定める日数分の障害補償をしなければならない。
等級 | 補償額 | 等級 | 補償額 |
1級 | 1,340日分 | 8級 | 450日分 |
2級 | 1,190日分 | 9級 | 350日分 |
3級 | 1,050日分 | 10級 | 270日分 |
4級 | 920日分 | 11級 | 200日分 |
5級 | 790日分 | 12級 | 140日分 |
6級 | 670日分 | 13級 | 90日分 |
7級 | 560日分 | 14級 | 50日分 |
4.遺族補償 第79条
労働者が業務上死亡した場合、使用者は遺族に対して、年金もしくは一時金の支払いを行わなければなりません。
5.葬祭料 第80条
労働者が業務上死亡した場合、使用者は葬祭を行う者に対して、葬祭料を支払わなければなりません。
3.労災保険について
3-1労災保険とは
1.労災保険は「労働者災害補償保険」の略で、
業務上または通勤によって、労働者が負傷、疾病、傷害、死亡した場合に、必要な保険給付を行うことを目的とする国の保険制度です。
2.業務上または通勤により負傷、疾病にかかった労働者の「社会復帰の促進」、「当該労働者およびその遺族の援護」、「労働者の安全および衛生の確保」をはかり、労働者の福祉の増進を目的とします。
3.「社会復帰促進事業」を行います。
3-2 労災保険が適用される事業所
労災保険は基本的に労働者を1人でも使用している事業所には適用されます。つまり、労働者を1人以上使用している会社は、労災保険に必ず加入しなければなりません。
3-3 労災保険の適用されない事業所
1.国の直営事業所
2.官公署の事業
3-4 労災保険の加入が任意とされる事業所
- 農業
常時5人未満の労働者を使用する個人経営の事業の場合
2.林業
常時労働者を使用せず、かつ年間使用延べ労働者が300人未満である個人経営の事業の場合
3.水産業
常時5人未満の労働者を使用する個人経営の事業で、総トン数5トン未満の漁船によるもの、または災害発生の恐れが少ない河川・湖沼または特定の水面において操業する事業の場合
3-5 労災保険が適用される労働者
適用事業所で使用される労働者であれば、常用、臨時、日雇い、アルバイト、パートタイマーなどの雇用形態を問わず、労災保険が適用されます。
派遣労働者については、派遣元の事業所の労災保険が適用されます。
いっぽう、一人親方や法人の役員は労災保険の加入対象ではありません。一人親方や中小企業の事業主や役員の場合、労災保険に加入する場合は、特別加入制度があります。
3-6 労災保険の加入手続きは?
労災保険の適用事業所となった場合は(前述3-2)、労災保険の加入手続きをしなければなりません。
労働基準監督署に以下の書類を提出します。
- 保険関係成立届
- 労働保険概算保険料申告書
- 履歴次項全部証明書(写)1通
書類の提出期限は
- 保険関係成立の翌日から10日以内
労働保険概算保険料申告書の提出は50日以内でもよいが、通常は他の書類と同時に提出し、50日以内に保険料を納付します。
3-7 労災保険の保険料はいくら?
労災保険の保険料は、従業員に支払った賃金の総額に、事業の種類ごとの労災保険料率を乗じて計算します。
労災保険料 = 従業員の賃金総額 × 労災保険料率
労災保険料率は業種ごとに決まっています。例えば、原油又は天然ガス鉱業2.5/1000、建設舗装工事業9/1000、食品製造業6/1000、のようになっています。
業種別の労災保険料率は厚生労働省のHPに掲載されていますので参考にしてください。
3-8 労災保険の認定
業務上の理由によって労働者が負傷、疾病、障害または死亡することを補償するのが労災保険ですが、業務であるか否かの判断は、「業務遂行性」と「業務起因性」によって、業務上か否かを判断することになっています。
- 業務遂行性
労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にあることを言います。作業中、作業準備中、後片付け中、休憩時間中の事業施設内の行動・出張中がこれに当たります。
2.業務起因性
業務と負傷、疾病等との間に相当因果関係があること
【業務上疾病とは?】
業務上の疾病には「災害性疾病」と「職業性疾病」があります。どちらも業務が原因で疾病になったものです。
1.災害性疾病とは
事故によって発病した疾病で、発病に至る唯一の原因である必要はなく、いくつかの有力な原因の1つが業務上の事故であれば災害性疾病となります。
2.職業性疾病とは
継続した業務の遂行が原因で発病した疾病のことで、いつ疾病の原因が発生したか特定することが出来ないため、一定の業務に従事していたことと、疾病の発生によって業務上の疾病として認められます。
3-9 労災保険の補償内容
政府労災が、被災した労働者や遺族に対しては、次のような内容を補償します。
療養(補償)給付
労働災害による傷病により治療を受けるときの費用
休業(補償)給付
労働災害による傷病で休むときの賃金の一定割合を補償
傷病(補償)年金
労働災害による傷病が1年6か月を経過して治癒しない場合や傷病等級1~3級に該当するとき年金支給 この場合休業(補償)給付は停止されます。
障害(補償)年金
労働災害による傷病が症状固定し、1~7級の障害となった場合に年金が支給されます。
障害(補償)一時金
労働災害による傷病が症状固定し、8~14級の障害となった場合に一時金が支給されます。
介護(補償)給付
障害(補償)年金または傷病(補償)年金受給者のうち、一定の介護状態に該当し、現に病院・施設以外で介護を受けているとき支給されます。
遺族(補償)年金
労働災害により死亡したとき、遺族人数により一定割合の年金が支給されます。
遺族(補償)一時金
遺族(補償)年金を受ける要件に該当する遺族が居ないとき支給されます。
葬祭料
労働災害により死亡した人の葬祭を行うとき支給されます。
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